農耕民族として田畑を耕し、生きる糧としてきた日本人。先人たちはおいしい農作物づくりを求めて探し歩き、豊かな土壌と水に恵まれた場所を住処にしたのではないでしょうか。今回ご紹介する物件があるのは、日本の原風景ともいえる「棚田」に囲まれた、山間の集落にある一軒家です。
「道の駅 阿蘇」から車で10分ちょっと。北外輪の山裾にある農道を進んで行くと、こんな看板が立っていました。
看板の矢印に従い進んで行くと、段々に切り立つ棚田が見えてきました。「阿蘇水掛の棚田」と呼ばれるこの一帯は、物件がある阿蘇市山田地区の住人が最初に取り組んだ棚田だそう。現在は数百人のボランティアによって田植えや稲刈りが行われています。そして、山林には「くまもと名水百選」の一つとなっている乙川湧水群が散在し、棚田の中にも流れています。
山の中腹に広がる棚田。秋にはかけ干しが行われます。ご紹介する物件からもう少し山を登ったところにあります。
この豊かな水と優れた農村景観は「世界農業遺産」の認定要素となっていて、自然と人の共存の営みを感じられる光景に、思わずため息。
美しい田園風景を横目にしながら農道を進んでいると、右手にお目当ての物件が見えてきました。
母屋まで遠い……。手前がそれかと思いきや、なんと納屋。右奥に見えるほうが母屋です。
敷地の南側にあたる玄関の前には、植物が好きだった家主が大切に手入れしてこられた、立派な日本庭園があります。住まいとして使われていた頃は、池に水をはって鯉を飼っていたそう。海外でも人気の高い鯉。いざ飼いたくても場所を準備するのが大変だったりするので、この機会に色とりどりの鯉たちを泳がせてみてはいかがでしょう。
日本庭園の先には「涅槃像」と呼ばれる阿蘇五岳のダイナミックな景観を一望できます。
家の前に立つと、玄関前の雨除け部分に反り屋根が設けられています。お寺などに用いられる日本古来の建築様式で、家主さんのただならぬこだわりが。
扉をくぐると家の大きさにふさわしい広々とした玄関があり、靴を脱ぎ履きする式台には立派な一枚板が敷いてありました。頭上にも、思わず目線が。仏教寺院や書院造などに用いられる格(ごう)天井が施され、さながら歴史的建造物の鑑賞に訪れた気分です。
それぞれの部屋まで広々とした廊下が張り巡らされ、時代劇で目にする武家屋敷のよう。玄関から入ってすぐ右手には8帖2間続きの和室があり、大宴会なんかも開けます。
2つの和室を仕切るフスマや欄間も凝ったもので、奥の部屋は床の間。伝統的な日本建築の技を随所に垣間見ることができます。
こちらの和室2間から広縁(ひろえん)を挟んだ南側には独立した和室があり、くれ縁(室内にある縁側)越しに日本庭園を眺めることができます。ぜいたくな空間でいただくお茶はまた、格別だろうな。
ご紹介したい場所が、まだまだあります、なんてったって7DKですから! 玄関の左手に居間、奥には台所が配置されています。
台所はダイニングテーブルを置いてもゆとりの広さ。
北側にも4.5帖の和室があり、クローゼットとして使われていました。
お風呂場は一般的なスペースの約2倍。大家族でも洗いあっこしながらバスタイムを楽しめそうですし、「ちょっと広すぎるかも!」という場合は、入り口付近の洗い場を着替え室に改造するのも良さそうです。
続いて2階へ。こちらは4帖半の2間続きとなっています。フスマを取り外してひと部屋としても使えるフレキシブルさは、和室ならでは。
2階南向きの窓から見た景色。隣家がないので視界を遮るものもなく、涅槃像が一望できます。
母屋のご紹介に続いて、敷地の入り口にある納屋を見ていきましょう。こちらはかつて、あか牛を飼っていたというだけあって、車やバイクを数台ぶん置ける広さがあります。車庫の利用はもちろん、DIYや愛車のカスタマイズといった趣味を楽しむ基地としてももってこい! 隣には別の納屋があり、売主さんは野菜を干したり農機具の保管場所にしたりしていたそう。
ちなみに母屋の台所の西側には勝手口があり、こちらから外へと出入りできます。大量に買いだめした食材や納屋で干していた野菜をそのまま台所へ持ち込めますし、土間は保管庫として保存食や作業着などを置いておくのに便利です。
今回取材させてもらった息子さんによると、父親が4年前に他界されて以来、母親が一人でこの大きな家を守ってこられたそう。しかし高齢となり、高齢者の施設に入られたことから「大切に住み継いでくださる方へお売りできれば」とのこと。
「もともと稲作主体の農村地帯でしたから、助け合いの精神が今も息づいています。ご近所さんとの交流がお好きな方でしたら、地域に溶け込んでいただけると思います」と売主さん。熊本市内よりも平均気温が5℃ほど低いので、冬はやや寒い半面、夏は爽やかな風が通り抜けて過ごしやすいそう。また、夜になると頭上に満天の星空が広がるといいます。想像するだけでロマンチック。
母屋の北側から見える景色。上の方にも棚田が広がっています。
そして、こちらの物件には、6197㎡の農地(地目が田、畑)が含まれています。
通常農地は農家以外の購入は認められませんが、阿蘇市の空き家に付随した特例農地の制度を利用し、こちらの農地は農家以外でも購入が可能です。
作物を栽培したり、草刈りなどの維持管理を行う必要があります。
築50年以上経つこともあり、全般的にメンテナンスが必要ですが、職人さんが昔ながらの技法で丹精込めて手がけた日本家屋だけあって、造りはしっかりしているように見受けられます。
そして、これは余談ですが、手つかずのままの敷地に咲く野花があまりにキレイだったので「少し分けていただけますか?」とお願いすると、「きっと母も喜びますから好きなだけ摘んでいってください」とのこと。ご厚意に甘えて花摘みさせていただきました(帽子や剪定バサミまでお借りして!)。すぐ傍には小川のサラサラと流れる音、遠くからは小鳥のさえずりが聞こえ、しばし里山暮らしの幸福感を味わったのでした。
広大な土地面積と、四季折々の景色を織りなす日本庭園。そして雄大な涅槃像。棚田の里で歴史を紡いできた美しい日本家屋で、豊かなスローライフの夢を叶えませんか? 詳細は気軽にお問い合わせを。