鹿児島在住ながら南阿蘇に惚れ込み、土地選びから建物の細部にまでこだわり抜いて設計された一軒家。果たして建築士の思いの詰まった邸宅とは一体、どんなもの!? さっそく拝見させてもらいました!
この物件の売主で鹿児島出身のMさんが阿蘇に魅了されたのは30年以上前のこと。以来、愛車のハーレーダビッドソンにまたがりツーリングで訪れ、年間100日あまり滞在していたといいます。九州各県へアクセスしやすい中継点としての利便性も決め手となり、ついに「阿蘇にもう一つの住まいを設けよう」と家づくりを決意。
「せっかくなら阿蘇らしい景観を存分に満喫できる家にしたい」と土地を探しまわり、ようやく見つけたのが現在の場所でした。周囲が遠くまで開けていて、南の外輪山と北の阿蘇山をどちらもキレイに見渡せることから、Mさんは「ここしかない!」と即決しました。
この芝生もすべて敷地内! 総面積250.5坪(826.65m2)の広さは想像以上。
有名なお茶メーカーの全国CMのロケ地に起用された南阿蘇鉄道「見晴台駅」まで約300m。
「水の生まれる里」と呼ばれる南阿蘇村の中でも環境省が日本全国から選ぶ”名水百選”となった「白川水源」まで車で約3分(1.5km)のところに位置しています。
Mさんは一級建築士の資格をお持ちとあって、隅々にまでこだわりが。なかでも妥協しなかったのが「明るさ」と「メンテナンスフリー」の2点でした。
まず「明るさ」については、それまで住んでいた家は日当たりがあまり良くなかったことから、光を取り込む家にしようと計画。
日本の標準時とされる兵庫県明石市の東経135度子午線を基準に、生活の中心となるリビングを真南に配置。建物の四方に窓や明かり取りを設け、どこにいても外の景観と光を感じられるようにしました。
暑い夏は太陽光が高くなり屋根で遮られるため直射日光が入りにくく、寒い冬になると暖かな陽光が部屋の奥まで入る設計に。南側と北側には広々としたデッキも設けられ、季節や天候に合わせて日光浴できるなんて幸せすぎる!
リビングに面した南側のデッキは奥行き2メートル。取材で訪れた5月、左手には田植え前で水を張った田んぼが広がっていました。チェアタイプのハンモックを置いて日向ぼっこしたい!
また、室内にも「採光」への配慮が。まずは玄関から見て行きましょう。
玄関の奥行きはベンチを置ける広さがあり、透かし掘りを施した扉とその隣に配した明かり取りから差し込む光がコントラストを描きます。下駄箱の足元や飾り棚にもさりげなく間接照明が施されています。
玄関をはじめとする部屋の要所ごとにアクセントとなる照明を配置。夜になるとムーディーな世界を演出してくれます。
続いてリビングへ。足を踏み入れた瞬間、目に飛び込んできた空間に度肝を抜きました。阿蘇の眺望を余すところなく享受できる窓と、外のテラスへ広がる繋がる足元。室内にいながら自然と一体になれる気分でファンタスティック!
南側に開口部の大きな窓、東側にはデザイン性の高い5枚窓をあしらい、室内にいながらテラスで過ごしている感覚に陥ります。
リビングの奥に見えるのはダイニングキッチン。透光性の引き戸の仕切りを設け、来客時はキッチンとダイニングをサッと隠せます。
天窓を設けたトイレは自然光を有効に取り込んだ心地良い空間。一般的なトイレよりもゆったりとしたスペースで、つい長居してしまいそう。
「明るいこと」に加えて特にこだわった点、それが「メンテナンスフリー」です。「住み始めた後から不便な思いはしたくない」と、隅々にまで配慮された工夫は、一級建築士の資格を持つMさんだからこそ。たとえば、住居部分は盛り土をして庭より70cm高台に配置。風通りが良くなることから湿気が溜まりにくく、目線が変わることで庭とその先に広がる南外輪山の雄大な景色が引き立ちます。
南側は美しい芝生が広がる庭からデッキにかけてなだらかな丘にすることで視界が高くなり、景観の抜け感が際立っています。さすが建築のプロならではのアイデア!
リビングの床は天然のパイン材に特殊な樹脂が塗装され、水滴が落ちても変色すること心配がありません。これまで一度もワックスがけをしたことがないそうですが、新築から10年以上経過しているとは思えないほどの美しさを保っています。
北側のデッキは奥行き2.4メートル。南側のデッキも含めて樹脂製なので、木製のデッキと比較して経年劣化しにくいのが嬉しい。
冬は熊本市内より寒くなる南阿蘇。窓に樹脂サッシと複層ガラスを採用することで、外気の熱を通しにくく結露しにくい構造となり、夏も冬も快適。
日本有数の楽器メーカー、ヤマハの技術を用いたシステムキッチンは高品質な塗装が特長。食器から調理器具までおさまる収納も魅力で食器をコレクションしているご家庭は大助かり! キッチンとダイニングを仕切るカウンターには幅30cmの一枚板を採用し、大皿を並べたり食材を置いたりと重宝します。
ほかにも「後から延長コードを使わず済むように」と、部屋の至るところにコンセントの接続口が設けられているのも嬉しいポイント。電化製品なしでは不便な現代社会、痒いところに手が届く配慮はさすが!
さらに住まいで重視したい省エネや安全性においても抜かりなし。「次世代省エネ高断熱仕様」、「省令準耐火仕様」の建物として、安心して快適な暮らしをおくれそうです。
こうした一級建築士の視点でこその機能性に加えて、随所に「遊びゴコロ」が散りばめられている点もポイントです。
リビングの壁に設けた明かり取りの小窓。飾り棚も設置してお気に入りの小物をディスプレーすれば、遊び心たっぷりの空間に。
ダイニングの隅に設けた縦長い窓が額装の役目を果たし、ベニウツギの花が部屋に色彩をもたらしていました。なんて小洒落た演出。
廊下に設けた飾り棚。お気に入りのコレクションを並べたり、外出で忘れたくない普段使いの小物を置いたり。アイデア次第でいろんな使い方ができそう。
趣のある和室は8帖。リビングと同じく南向きにあるので夏は強い日差しが入りにくく、冬は暖かな光を取り込んでくれます。ゴロンと寝転んでお昼寝したり、足を伸ばしてくつろいだりと畳ライフを満喫! 床の間に生花やお気に入りのコレクションを月ごとに並べ替えるのも楽しそう。
寝室から見渡す北側の窓からは根子岳、中岳といった阿蘇山を構成する山々を一望。
なお、敷地と山々の間に立ち並ぶ木立は行政所有の土地(水路)に根付いており、伐採しても問題ないそうです(売主が行政機関に確認済みですが、念のため確認を)。伐採してさらに開ける眺望を楽しむのもよし、そのまま残して目隠し代わりに残すのもよし。
これだけこだわり抜いた家だけに、売り主のMさんからは「後ろ髪をひかれる思いです」との本音もポロリ。それはそうでしょう。築12年とは思えないほど手入れの行き届いた庭や建物を目にすれば、ここでの暮らしをどれほど慈しんでこられたかが伝わってきます。それでも、長男として鹿児島の実家を放っておけないとの理由から、大切にしてきたこの家を手放す決心をしました。
そんな打ち明け話に耳を傾けていると、リビングの窓越しに動くものが。田畑と山々の間を駆け抜けて行ったのは、南阿蘇鉄道のトロッコ列車。週末になるとこの光景を目にできるそうで、鉄道好きならずとも心浮き立ちます!
南阿蘇をこよなく愛し、一級建築士の資格を有する売主の英知が詰まった家。あまりにも魅力が満載で紹介しきれなかったところもまだまだございます。