後藤さんは2018年の退職を機に、自分のビニールハウスを構えて栽培を本格化させた。そこには、後藤さんとともに歩んできたシンボルツリーが今も並んでいる。
「栽培を始めた当時からのものを植え替えて2本だけ置いてあります。しんどい時でもこのコーヒーの木を見れば、がんばろうと思えるんです」
目標はコーヒー栽培を阿蘇で広めること。害虫や病気に強いコーヒーは、高齢になった農家でも栽培がしやすいと後藤さんはいう。高齢化、過疎化の進む地域で、特産品になると見込んでいる。
周囲に知ってもらうために、後藤さんの農園では、コーヒーの木1本ずつのオーナー制を採用した。1本あたりコーヒー30杯分を保証している。
「自分のコーヒーを持ってもらって、ここに来てもらうのが前提です。コーヒーを通じて新しい人たちを呼び込めるんじゃないかな。自分の木を自慢したくなるんですよ。最初は家族から始まって、友人、知人、あるいは職場の人を連れてきます。そして、南阿蘇のファンになってもらいたいです」
2020年は56人のオーナーが付き、延べ300~400人が農園を訪れた。着々と実績をつくる後藤さんだが、まだ道の途中だ。
焙煎イベントや地域を巡るツアーを企画しているが、コロナ禍でなかなか実施まで漕ぎつけられない。しかし、後藤さんに焦りの色は見られない。厳しい自然に耐えるコーヒーのように、難局を乗り切った後には、豊かな実りが待っている。