風通しのよい広い部屋。目の前の畑のもので朝食を済ませ、納屋で1日を始める準備をする。田舎ではあたりまえだった暮らし方は古いと言われ次々と置き換わってきました。想定されていないことが起こるようになって、そのあたり前だった暮らしは、以前よりも輝きを増して私の目の前にあります。阿蘇にはまだそのような環境が残っているのです。
今まで大切に残されてきた築古(1962年築)の木造戸建ならではの懐かしさや愛着、この独特の佇まいは、便利さでは手にすることのできない価値といえます。玄関を上がると、襖が開け放たれて開放的になった部屋に圧倒される。ふと、どこからか風が流れてきています。
無限に広がっているのではないかと思ってしまうこの空間。ソーシャルディスタンシング、3つの密なんてここにはありません
いらっしゃいました、大黒さま。太さ9寸(約27cm)× 8寸(約24cm)の大黒柱。対になっている太さ6.5寸(約19cm)の小黒柱(恵比寿柱とも長者柱とも言われる)も大黒柱と共に家を支えています。さらには太さ11.5寸(約35cm)もある差し鴨居で柱をがっちり囲んで田の字型間取りの完成。昔から柱は神さまとされ大切にされてきました。リフォームするならこの神さま(躯体)の力を存分に活かしたいところ
一部フローリングに改装されている部屋もあります。古民家ならではなのは天井の高さ。それを活かして既存の壁や天井を取り払いさらに空間のボリュームを大きくし、できるだけ光を取り込むようにすれば劇的に雰囲気はかわることでしょう
母屋の隣には、母屋と同じくらいの広さがある納屋もあります。大きな木材が使用されていて、母屋よりも頑丈なんじゃないかと思うほど立派で、以前は農耕用の牛や馬が飼われていました。
春は畑を耕させ、夏は阿蘇山のふもとの牧野に放牧し、冬は刈っておいた草原の干し草を食べさせてその糞を田畑に混ぜるといった循環型の暮らしがここにはありました。ちなみに現在もお隣のお宅では牛が飼われています。
母屋2階から見る南側の庭(畑)は約600㎡あり、25メートルプールもすっぽり入る広さ!阿蘇山も眺められます。
これまでは自宅用に阿蘇の伝統野菜の「阿蘇高菜」や「地ぎゅうり」、「あかどいも」を育てていました。敷地全体の広さは約1,200㎡。これだけの面積があれば野菜等は売るほどできそうです。
この物件がある阿蘇市役犬原は阿蘇北側カルデラのほぼ中心に位置しています。阿蘇は水が豊富ですが、このエリアは中でも水が豊富な場所です。阿蘇山や外輪山から地下を通って集まってきた水が高い圧力で自然に吹き出すことを「自噴」といい、この役犬原では自噴しているところが10数箇所ほどあります。
集落にある霜(しも)神社では、火焚き乙女が約60日間火を焚いて神様を鎮める「火焚き神事」が毎年行われています。国指定重要無形民族文化財に指定されているこの神事は、農作物を霜の害から守り、五穀豊穣を祈願するために2700年以上前から続いているという記録があるとのこと
昨今話題にされている「新しい生活様式」という言葉を聞くと考え込んでしまいます。長い間、人は自然とともに生活してきました。それはこれからも変わることはないでしょう。
長い時間をかけて繋がれてきた価値を見極めて、大切なものだけを次の世代へ繋いでいく。今まであたり前だったことを捉え直すタイミングがもう来てしまいました。
新しさだけではなく、古くても良いものを残し、その中に美しさを見出していく。そんなあたり前の原点に立ち戻ることだけで、今よりももっと豊かで成熟した持続的な社会や文化に繋がっていくと思うのです。私はこの物件からその可能性を見たのでした。
物件概要
所在地 | 熊本県阿蘇市役犬原 |
交通 | 「四分一」バス停 徒歩5分 |
価格 | 600万円 |
間取り | 7LDK |
構造 | 木造 |
建物延面積 | 122.31㎡(付属屋は119㎡) |
土地面積 | 1205.03㎡ |
築年月 | 昭和37年(1962年) |
土地権利 | 所有権 |
都市計画 | 区域内 |
用途地域 | 指定なし |
建ぺい率 | 70% |
容積率 | 200% |
地目 | 宅地 |
接道状況 | 西 4m 公道 |
現況 | 空き家 |
引き渡し | 相談 |
情報更新日 | 2021年3月3日 |
備考 | 現況優先 |
物件番号 | 50080 |