阿蘇内牧の歴史と文化をつなぐ、松谷文華堂

『松谷文華堂』は1899年創業、2019年で120年目となった文房具屋さんです。阿蘇内牧で、明治から現在まで業種変更を一度もせずに経営している唯一の企業。当然ながら、世代を超えて松谷文華堂を利用しているご近所さんは多く、内牧では存在を知らない人はいません。こんなにも長く愛される秘密があるに違いない!

内牧の変遷を見守り続けてきた“町の文房具屋さん”4代目店主・松谷亮さんにお話を伺いました。

初代創業者、松谷伊八郎氏を指さす4代目松谷亮さん

城跡に建つ文房具店

松谷 店が立っているこの敷地は、今から400年以上前の江戸時代はお城だったんです。当時、阿蘇氏は豪族として名を馳せていました。阿蘇神社は日本で三番目に古い神社といわれているので、強い勢力を保っていたんですね。ところが、室町時代になると、薩摩の島津氏の勢力に攻め込まれて、神社もお城もすべて壊されてしまいます。安土桃山時代には、加藤清正が肥後(現在の熊本)に入り、その重臣だった加藤可重が阿蘇神社や内牧を整備しました。加藤可重は近江出身で、穴太衆(あのうしゅう)と呼ばれる古墳築造などを行っていた石工の末裔の名工たちと日本三名城の一つと言われる熊本城の石垣を手がけながら、内牧城を再生したと言われています。

江戸時代には、一国一城令によっては内牧城はなくなりましたが、参勤交代の御旅所、いわゆるお茶屋として使われました。その後内牧小学校になり現在の文房具店となったという訳です。昔、学校を作る場所と言ったら、お城跡かお寺の近くまたは、神社の近くが多かったんですね。ここも城跡ですので周りよりも少し高いのですが、今まで水害でも浸からなかったということもあり、災害の時の避難場所になっていたりなど、比較的強い場所として安心なのかもしれません。

その時代に必要とされる施設に、この場所は受け継がれていきました。

―その様な良い場所が、なぜ文房具屋さんになったのですか?

松谷 実は初代がこの内牧小学校の先生だったんです。先生として小学校の敷地中に住みながら、教科書販売もしていたようです。それがこの店の始まりとなります。なので当時の登録には“筆墨商”と書いてあり、学校のものを揃える筆墨、つまり文具を揃えるお店になったという訳です。

 

 

現在ではお客様のニーズに応えるために、書籍などセレクトされた様々な商品を取り揃えています。カラフルで目を引く商品やセンスの良いデザインのものが多く、目移りしてしまうほど。店内を見て歩くだけでも楽しいです。

ひときわ目についたのは、色とりどりのガラスペン。ガラスペンは風鈴職人によって日本で考案されたそうで、今でもひとつひとつ手作りです。

歴史をつなぐということ

頼もしい従業員がいるのも松谷文華堂の魅力の一つです。デザイナーの上村さんは以前は印刷会社でのデザイン経験を活かしたポップやフライヤーの作成などを担当されています。お店に散りばめられている手書きポップには、お客様に商品の魅力が届くように丁寧に書かれています。

 

「ネットで伝えられないですからね、こういうことは。小さい店だからこそできることをやっていきたいと思っています」と、語る松谷さん。小さいからこそかゆいところにも手が届くので、お客様への満足度へとつながっています。

熊本地震で飼い主とはぐれた天蝶(テンチョウ)という名の猫。現在は松谷さんが飼っていて、お店では「看板猫」として店長並みの扱いです。

常に地域の役に立てるよう工夫し、お客様に知識や情報を懇切に伝える。この丁寧な姿勢から、松谷文華堂さんが地域で長く愛される秘密を見たのでした。

知的創造空間 松谷文華堂
住所 熊本県阿蘇市内牧269-1

電話 0967-32-0154